2010/01/19

相棒との対話

注)今日の記事は長いです。
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ホルンを始めたのは遅かった私。




大学を卒業する直前、この相棒はここには書けないようなちょっとした運命的なめぐり合わせで私のもとにやってきた。
この3月でちょうど10年のつきあいになる。



けれども、一緒にやってきた10年来経験したことのない不調に陥っている。ちょっとしたスランプは今までもあった。
でも今回はちょっとどころか、かなりのピンチだ。

去年から調子を崩していて、なだめすかしながらやってきたのだけれど、
1週間前、唇の右上が痙攣してついにある音域から上が吹けなくなった。

半べそかきながら1時間ほど基礎練をして、なんとかしびれがとれたか、
というような状態。3月の本番の曲に向けては致命的。


翌日、ある先生のところに駆け込み、練習方法を聞いて毎日すこしでも練習して何とかしてやろうと鼻息荒くして意気込んでいた。
でも内心、間に合うんだろうかという不安もとれないままだった。





10年以上、お世話になっている先生に指摘されたことなどを報告してみた。

この先生は普段遠くにいるので、今回すぐに直接は見てもらえない。
けれども私とコイツのコンビを一番良くしっているのはその先生だ。

そしたら、
「荒療治と思えるかもしれないけれど、1週間は吹かないこと。まずは大きな筋肉を休ませ、粘膜を良い状態に戻すこと。」
と返事が。


「靴擦れしているときに靴履きたくないでしょうが。そういうときは裸足が一番いいの」と言った。
「で、今度吹き始めるときが肝心なんだから、丁寧に、いきなりティルとかやらないの。」 とも言っていた(笑)
私の性格も良く知っているから、慌てた私が躍起になっていたことも容易に想像できたのだろう。



ほんとにそんなに何もしないで休んでいいんだろうか、と思ったけれど、
不思議と「そうか」と思えて、丸1週間休んだ。





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そして今日が解禁日。


今日は中音のB-H-Cの3音のmpのロングトーンのみ。


今朝、家を出るまであと20分ちょっと、という時にふっと
「そうだ、mpならきっと隣からも文句言われないだろう」と思いたって少し吹いてみる。


音が震える。
やっぱり唇の上が少し痙攣している。

どうなってしまうんだろう・・・・と不安になったが、20分ほど吹いてすこし緊張がほぐれてきた。
でも会社に行く時間だ。


タイムアウト。

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家に帰ってきて、また吹き始める。
最初はBだけ。鏡とにらめっこしながら。


40分くらい吹いたところで、ふっと力を抜いてリラックスして気持ちよく吹ける瞬間が訪れる。
でもまだ安定しない。


1時間経過したあたりで、下唇の裏に歯の跡がくっきり。
中音だけなら、何時間吹いてもいい、と言われていたけれど、少し痛みがある。
今日はB-H-Cを気持ちよく吹いたところで終わりにした。



本当は、ちょっと焦りそうになる自分も居る。
ちょっと上の音域を確かめたくなる自分が居るし、週末の練習のことも気になる。


けれど、先生は「毎日少しずつ積み木を積んでいくように。からまった糸をほぐすように」。
「だまされたと思ってやってみて」と言っていた。



今日の感触だと、この先どうなるかわからなかった。

けれど今日はまだ初日なんだ。


私よりたくさん経験を積んでる先生がそう言うのだから、今回はどのくらいだまされていられるか、
根比べしてみようじゃないか。


そう思って今日は楽器ケースを閉じる。


本当にこれが最後、と楽器ケースを閉じる時のことを考えてみる、
その時自分は「最っ高に楽しかったね!本当にありがとう」って思えなきゃダメだ。


今はまだ、その時じゃない、と思っている自分がいるみたい。



ちょっと厳しいピンチだけど、何とかして乗り越えたい。

もうちょっと力をかしておくれ、おまいさん。